幻想世界Ⅰ(F6号:318×410mm)
前回、背景なしのシンプルな構図で不完全燃焼に終わったため、
次作では背景に凝ったド派手な作品を描きたいと思っていました。
クリスチャン・リース・ラッセンやカーク・レイナートのような
美しい写実画が昔から好きで、
学生時代には、よく海や熱帯魚の絵を描いていました。
そこで今回は、「美しい風景」と「猫」を組み合わせることを
テーマに設定し、それに合う素材を探しました。
先に素材が決定したのは、猫の方です。
窓から外を眺めるベンガルのララちゃん。
「逆光のアングルが海辺の夕焼けと合うのでは」と思い、
イメージに合わせて背景の素材を検索しました。
そうして決定したのが今回の構図です。
描き始める段階で完成図のイメージが固まっていたため、
出だしは順調でした。
しかし背景の描写は今までで一番複雑で、
上下対称に設定したため正確さも求められます。
猫と背景で光源の位置も統一しなければならないため、
今までより頭を使って描いていました。
そうして完成したのが今回の作品、「幻想世界Ⅰ」です。
後に描き続ける「猫+幻想的な背景」シリーズの第一弾になりました。
全体的に黄色やオレンジ系の彩色でまとめ、
コントラストを強めにして夕焼けを表現しました。
背景と猫が違和感なくなじむよう影の位置や方向に気を付け、
「猫がいる空間」を前面に押し出しそうと意識しました。
結果的に、今でもお気に入りの良作に仕上がりました。
左下の貝殻だけは「何か他の表現がなかったかな~」と疑問ですが、
全体的に統一感があり描きたいものはすべて描けました。
猫との接地面や影の描写も、過去作品と比べて自然に見えます。
今から加筆するとしたら、
背景をもう少しぼかしてもっと遠近感を出してもいいとは思います。
F6号の小作品ながら、普段の倍近くの時間をかけたことを覚えています。
その分描き上げた後は達成感があり、充実した時間を送れました。
「このシリーズをもっと描きたい!」という思いから、
この後しばらくは、背景にもこだわった作品を描き続けることになります。
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